環境・食品遺伝子検査について
環境・食品検査(細菌・ウイルス検査)は、臨床検査より馴染みがない方多いかと思いますが、主に環境や食品が病原体に汚染されているかどうかの検査です。
例えば、温泉や水タンクなどでのレジオネラ検査、食品のサルモネラ検査などが挙げられます。
環境・食品遺伝子検査のメカニズムは感染症遺伝子検査と全く一致しており(異物の遺伝子を検出する面から捉えると)、違うのは検体は人から採取したものではなく、食品に差し替えたのみです。ご興味ある方は感染症遺伝子検査の解説もご覧ください。
環境・食品遺伝子検査のメリット
培養検査は一番古典的な感染症検査方法であり、環境や食品検査においても同様です。環境や食品から採取した検体を培養して、顕微鏡で観察するなり染色するなり、対象の病原体の有無を診断します。
しかしウイルスや一部の細菌など培養困難なものがあり、それらを検査する際は遺伝子検査が適しています。
また、培養には長時間の培養時間が必要であり、通常18~48時間の培養時間が必要です。それに対し、遺伝子検査であるPCR検査は1-2時間、LAMP検査は30分-1時間で結果が出ます。
環境・食品遺伝子検査のデメリット
感染症遺伝子検査は遺伝子を大量に増やして検出する検査なので、性質上コンタミネーションに影響されやすいです。
大量に増えてしまった遺伝子断片が飛び散って他の検体と混ざってしまった場合、他の検体は陰性なはずでも陽性が出てしまいます。また、自然界の異物(空気中の雑菌など)もどの様な遺伝子配列持ってるのか分からないので、場合によっては検査キットと予想外な反応を起こして、不本意的に遺伝子が増幅する場合が稀にあります(これを非特異反応と言います)。
また、遺伝子検査のキットも検査機器も、他の検査より高価です。
遺伝子検査キットにはプライマー・酵素・dNTPなど様々なデリケートなものが入っており、且つ温度に敏感なので冷凍や冷蔵が必要な場合があります。
検査機器に関しては、PCR検査では温度を約4℃~90℃をルールに従って変温するPCR機械が必要で、LAMP検査では定温機器でPCR検査より低価格ですが、キットの設計がPCRより複雑です。
環境・食品遺伝子検査で用いる方法
現在日本で行う環境遺伝子検査・食品遺伝子検査ではは、感染症遺伝子検査は主にPCR法とLAMP法があります。
PCR法
現在最も使われている遺伝子検査法。
世界初の遺伝子増幅法で、1983年アメリカの生物学者 Kary Banks Mullis によって開発された。元々特定な遺伝子配列を大量に増やす技術として研究で使われていたが、後に臨床検査や食品検査でも使われるようになった。
LAMP法
日本ではPCR法の次に使われる遺伝子検査法。
日本発の遺伝子増幅法であり、栄研化学株式会社によって開発され、商標権を所有している。
PCR法とLAMP法の比較
検査技術 | PCR法 | LAMP法 |
反応時間 | 長い(1-2h) | 短い(0.5-1h) |
感度(特異性) | 中程度 | 高い |
偽陽性 | 中程度 | 出やすい |
反応温度 | 変温 | 平温 |
試薬コスト | 中程度 | 高い |
装置コスト | 高い | 安い |
定量測定 | 可能 | 不可能 |
環境・食品遺伝子検査の実例
環境遺伝子検査
- レジオネラ
- クリプトスポリジウム
- ジアルジア
食品遺伝子検査
- サルモネラ
- 腸管出血性大腸菌
- ベロ毒素
- 大腸菌O157
- カンピロバクター
- ノロウイルス