DNAシークエンシング

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DNAシークエンシングとは

「遺伝子とは」という記事では、DNAは4種類の塩基によって構成され、それの並び方が遺伝情報を構成している事が分かりました。

DNAシークエンシングとは、人などの遺伝子の塩基配列を調べるための分析法です。
そこで得た遺伝情報から、健康リスク分析・体質分析・先祖解析など色んな事が分かるようになります。

遺伝子増幅法との違い

PCR法やLAMP法などの遺伝子増幅法と異なり、特定の配列を検出または増幅させる目的ではなく、配列全体を把握する事が目的です。

  • 遺伝子増幅:未知の配列群の中から既知の配列を見つけ出す
  • DNAシークエンシング:未知の配列群を既知にする

DNAシークエンシングの原理

DNAシークエンシングは色んな種類があり、それぞれ複雑な技術を使っています。
今回は臨床検査においてメジャーな3種類について紹介します。

サンガーシークエンシング

塩基依存的にDNA断片を作製し、その長さを比べることで塩基の順序を知ることが出来ます。
塩基依存的にDNA断片の作製は化学反応によって、調べたいDNAが色んな長さで分断されます。

例えば、配列「GTCTGAAACATGATT」を標的としよう。

アデニン(A)で切断した場合

  • GTCTGA <-> AACATGATT
  • GTCTGAA <-> ACATGATT
  • GTCTGAAA <-> CATGATT
  • GTCTGAAACA <-> TGATT
  • GTCTGAAACATGA <-> TT

チミン(T)で切断した場合

  • GT <-> CTGAAACATGATT
  • GTCT <-> GAAACATGATT
  • GTCTGAAACAT <-> GATT
  • GTCTGAAACATGAT <-> T
  • GTCTGAAACATGATT

シトシン(C)で切断した場合

  • G <-> TCTGAAACATGATT
  • GTCTG <-> AAACATGATT
  • GTCTGAAACATG <-> ATT

グアニン(G)で切断した場合

  • GTC <-> TGAAACATGATT
  • GTCTGAAAC <-> ATGATT

その結果、各切断結果の長さにおいては

  • アデニン(A):6、7、8、10、13
  • グアニン(G):1、5、12
  • シトシン(C):3、9
  • チミン(T):2、4、11、14、15

出典:DNAシークエンシング-DNA断片長による方法『ウィキペディア(Wikipedia)』

そして、この4組の切断産物を電気泳動させます

電気泳動とは

ゲルの中にDNA断片を入れて、電気を通すとゲルの中で移動します。DNA断片の長さによって移動速度が異なるので、DNA断片の分離や特定などに使われます。

4つの塩基グループに分けて切断
サンガー法
シークエンス
4つの塩基グループに分けて切断
切断された配列を電気泳動
サンガー法
シークエンス
切断された配列を電気泳動

電気泳動でも配列を読み取ることが出来ますが、非常に効率が悪いので、蛍光標識試薬やサイクルシークエンス、キャピラリー電気泳動などの技術が開発され、精度や迅速性が飛躍的に向上した。

蛍光標識で配列を読み取り
シークエンス
蛍光標識で配列を読み取り
サイクルシークエンス法
サイクルシークエンス法
DNAシーケンサー
DNAシーケンサー(配列の切断と読み取りを爆速に上げた機械)
シークエンス
DNAシーケンサーからの出力ファイルの例

出典:生物配列解析基礎 配列データベースとホモロジー検索 (法政大学 生命科学部 応用植物科学科 大島 研郎)

ダイレクトシークエンシング

ダイレクトシークエンシングは、PCR法とDNAシークエンシングの融合技術です。

標的の遺伝子配列に対し、調べたい領域をもし事前に把握しているのであれば、その領域(未知の部分)の両端の既知の部分でプライマを作成して、PCRを行えば、未知の部分を含む配列がPCRによって大量に増幅されます。

そしてその増幅産物に対しDNAシークエンシングを行います。

ダイレクトシークエンシング
ダイレクトシークエンシング

次世代シークエンシング(NGS)

次世代シークエンシング(NGS)は、サンガーシーケンシングの超バージョンアップと言ってよいでしょう。

簡単に言えば、通常のシーケンシングを大量に並列同時進行できる技術です。
その結果、数千から数百万ものDNA分子を同時に配列決定可能になり、複数個体を同時に配列決定できるなど高度かつ高速な処理が可能であることから、個の医療、遺伝性疾患、および臨床診断学といった分野に変革をもたらしています。

次世代シークエンシングのメカニズム
次世代シークエンシングのメカニズム

出典:次世代シーケンシング(NGS)とは(コスモ・バイオ株式会社)

DNAシークエンシングの応用(遺伝子検査において)

サンガーシークエンシングの応用

がん遺伝子検査

  • BRCA1/2遺伝子検査 (乳癌)
  • BRCA1/2遺伝子検査(卵巣癌)

ダイレクトシークエンシングの応用

白血病診断

  • KIT シーケンス解析
  • Major/minor BCR-ABL1 ABL1変異解析

がん遺伝子検査

  • BRAF遺伝子変異解析(SEQ)
  • RAS・BRAF遺伝子変異解析
  • IDH1/2遺伝子解析(神経膠腫)
  • PIK3CA 遺伝子変異解析
  • c-kit遺伝子変異解析(GIST)

遺伝学的検査

  • RET遺伝子変異解析 (甲状腺髄様癌)
  • PRRT2遺伝子変異解析
  • MECP2遺伝子(exon3,4)変異解析

薬剤応答遺伝子検査

  • 薬物代謝酵素チトクロームP450 CYP2C19遺伝子多型解析

次世代シーケンシング(NGS)の応用

がん遺伝子検査

  • オンコマイン Dx Target Test CDxシステム

遺伝子解析

  • 先天性QT延長症候群遺伝子解析
  • 健康リスク分析
  • 体質分析
  • 先祖解析
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