遺伝子検査と他の臨床検査の違いについて

目次

臨床検査とは


まず、ご存知だと思いますが、病気になった時や健康診断の時に病院へ行って血液検査・尿検査して、あなたの今の健康状態のデーターを出して、医師がそのデータを参考しつつ、あなたに診断を下します。

臨床検査とは

血液、尿などの検体に対し、化学・生物学的などの方法であなたの健康状態や疾病状態をデータ化し把握する行為を臨床検査(検体検査)と言います。

臨床検査の種類

検体検査

  • 一般検査:尿や便などの成分を調べて、腎臓・肝臓・消化器などの異常をチェックします
  • 血液学検査:血液における赤血球・白血球・血小板などの数・比率・細胞状態を確認し、血液の異常や炎症の状況などをチェックします
  • 生化学検査:血液の中の糖分・脂肪・ミネラル・タンパク質などの物質を調べ、臓器の異常などをチェックします
  • 免疫検査:血液などの検体の中の特定なタンパク質の有無または量を把握し、特定疾患の有無または状態を把握します
  • 遺伝子検査:血液などの検体の中の特定な遺伝子配列の有無または量を把握し、特定疾患の有無または状態を把握します

生理機能検査

  • 呼吸機能検査:肺活量など呼吸器の機能測定を行い、レントゲンではわからない肺や気管、気管支の状態を調べます
  • 超音波検査:身体に超音波を当て、 その反射波によって臓器や胎児の状態を調べます
  • 循環器関連検査:心電図、心音図、脈波などを調べ、 心筋梗塞や心不全などの診断に利用します
  • 脳波検査:頭皮に電極を装着し、α波やβ波などの電気的信号を 脳波計で記録して脳神経などを調べます
  • 眼底写真検査:眼底カメラで網膜を撮影し、動脈硬化や糖尿病などで血管系に 起こる変化を調べます
  • 磁気共鳴画像検査:身体に磁気を当て、共鳴エネルギーを 画像にして異常の有無を調べます

*一部出典:臨床検査とは|臨床検査って何? – 日本衛生検査所協会

遺伝子検査と他の検体検査の違い


上記臨床検査の説明であったように、遺伝子検査は、血液などの検体の中の特定な遺伝子配列の有無または量を把握し、特定疾患の有無または状態を把握するための検査です。

即ち、伝子検査が他の検体検査との違いは、検出対象が遺伝子である事です。

では具体的な例で説明してみます。あなたは熱を出しました、咳が出ます、且つ今は新型コロナウイルスが流行っている時期です。病院へ搬送しました。この時に受ける可能性のある検査は4つです。

血液検査

検出対象:血球

血液検査

発熱と咳の症状から見ると、感染症の可能性が高いです。有害な微生物が人体に進入すると、それを阻止する為に白血球が動き出しますが、増える白血球が何なのかによって、ある程度の感染症の状況を把握できます。

例えば、好中球が増えることになると、細菌による感染症の可能性が高く、リンパ球が増えることになると、ウイルスによる感染症の可能性が高い事が分かります。

生化学検査

検出対象:一般的なタンパク質

生化学検査

ここで一般的なタンパク質というのは、例えばC-リアクディブ・プロテイン(CRP)という血液の中に良く現れるタンパク質があり、体内に炎症が起きたりする際にこのたんぱく質が増えてしまいます。

CRP検査は炎症の具合を判断する生化学検査の一種であり、炎症は感染症・自己免疫疾患・がんなどが起きた際に起こりゆるので、診断の参照の一つとなります。

免疫血清検査

検出対象:特定なタンパク質

免疫血清検査

ここで特定なタンパク質は、新型コロナウイルスの抗原または抗体です。どちらもCRPと違い、血液の中に従来存在しているタンパク質ではなく、コロナによる感染のみに現れるタンパク質です。それを特異的に検出することにより、コロナの感染状況を把握できます。

免疫血清検査は、タンパク質相互作用によって、特定なタンパク質がある(陽性)かない(陰性)かを判断する検査です。

抗原検査で陽性になった場合、現時点でコロナ感染の可能性が示唆され、抗体検査になった場合、過去にコロナ感染が起きたことが示唆されます。

遺伝子検査

検出対象:特定な遺伝子配列

遺伝子検査

この場合の検出対象は、新型コロナウイルスの遺伝子配列(この場合はRNA)です。

新型コロナウイルスの遺伝子配列は人間の細胞と異なるので、血液の中にコロナにあって人間にはない特異的な配列を何かの方法で有無を判断出来れば、血中にウイルスが入っているかどうかが分かります。

PCR検査は、調整された試薬により、コロナだけが持っている遺伝子配列のみを増幅させて、増幅された特異的配列を検出する事によって、配列がある(陽性)または配列がない(陰性)を判断し、現時点でコロナ感染の可能性を示唆する検査です。

免疫血清検査に関して幾つかのQ&A

生化学検査も免疫血清検査もタンパク質を検出してるのに何が違うの?

ご指摘の通り、ここでの生化学検査であるCRP検査も、タンパク質間相互作用によって、CRPタンパク質を検出しています、検出方法の原理的には免疫血清検査と変わりはありません。
しかし、生化学検査はタンパク質だけではなく、血液の中に従来あるを全般的に見る検査の大分類です。

例えば、血中ナトリウム濃度を化学反応の手法で測定する事が低ナトリウム血症(水中毒)を診断し、血糖を化学反応の手法で測定する事とHbA1C(グリコヘモグロビン、過去の血糖コントロール状況が分かるタンパク質)をタンパク質間相互作用で検出する事で糖尿病の状態を判断します、これらが全て生化学検査です。

検査方法が然程重要ではなく、血液の中に従来存在する一般的な物質を見るのが生化学検査のポイントです。
これに対し、免疫血清検査は、特別な状況でしか現れない特殊なたんぱく質(例えば、病原菌の抗原や、病原菌の侵入によって現れる抗体)を特異的に検出するのがポイントです。

免疫血清検査で、抗原検査と抗体検査の違いとは?

またコロナウイルスの例を例えると:

抗原:コロナウイルス自身が持っているタンパク質(人の細胞は持っていない)
抗体:コロナウイルスが侵入すると、コロナウイルスを排除する免疫活動の一環で、人体の免疫システムによって作り出された、コロナウイルスを敵だと表記する為のタンパク質、抗体のマークによって免疫細胞が誰を攻撃して良いかわかる(コロナウイルスが侵入しないと、抗体も現れない)

抗原も抗体もコロナウイルスが侵入すると現れるし、侵入しないと現れないという共通点を持っているが、出現する目的もタイミング的にも全く異なる事が分かります。

故に、医療現場では、抗原検査は即時感染を見るもので、抗体検査は過去の感染歴を見えうという使い分けの運用になっています。

遺伝子検査の意義(メリット)


この様に、血清免疫検査での抗原検査も、遺伝子検査でのPCR検査も、今コロナに感染してるかどうかを調べる検査として作用は全く同じなのに、何故遺伝子検査が本在する必要があるのでしょうか?遺伝子検査を選択した上でどの様なメリットがあるのでしょうか?

(1)遺伝子検査の精度でしか検出できない場合がある

抗原検査とPCR検査の話に戻るとしよう。目的は同じでも検査方法は勿論お互い異なりますが、細かい技術的な話はさておき、お互い一番の違いは:

  • 抗原検査は、検出対象(抗原)の数の分しか検出できない
  • PCR検査は、検出対象(遺伝子配列)を増幅させてから検出することが出来る
  • 故に、PCR検査は、抗原検査よりもっと低い濃度の病原体を検出することが可能
PCR検査と抗原検査の違い

即ち、血中の病原体の濃度が低い場合、抗原検査では試薬の精度よりも低いレベルだと検出できない事に対し、PCR検査は検出対象である遺伝子配列をPCR法という遺伝子増幅法で増やすことが出来るので、低い濃度の対象に対して検出が可能になった。

(2)遺伝子でしか観測できない疾患がある

PCR検査などは勿論外来物である病原体などを検出する為だけの検査ではありません。下記の場合、人の細胞自身の遺伝子を調べる事によって疾患状態や健康状態を把握する必要があります。この様な検査は遺伝子検査しか実現できません。

  1. 遺伝性の病気(家族性遺伝性疾患など)などの可能性を抱えており、それを確かめる為に、遺伝性の病気の特徴のある遺伝子配列をPCRなどで増幅させて、検出する
  2. がんの個別化治療で使われる抗がん剤(分子標的薬)を使用する際に、その抗がん剤が患者に適応するかどうか(効くかどうか)を判断する際に、遺伝子検査(この場合はPCR法でがん関連の特定遺伝子配列を増幅させて調べる)を行う必要がある
  3. 遺伝学的検査(生まれてくる子供は健康かどうか)、遺伝子解析(将来の健康状態を予測する)など、遺伝子配列を解析する前提の検査は当然遺伝子検査しかできない(この場合はDNAシークエンシングという方法を用いる)

遺伝子検査の分類について


用途で分ける遺伝子検査

遺伝子検査は、感染症の検出から、遺伝性疾患の特定、がんの個別化医療における応用、将来の健康状態の予測など様々な用途があり、それぞれ似てるものもあれば全く異なるものもあります。

  • 感染症遺伝子検査
  • がん遺伝子検査
  • 遺伝学的検査
  • 遺伝子解析

技術で分ける遺伝子検査

遺伝子検査では、遺伝子配列を増幅させて検出する技術や、遺伝子配列の並びを解析する更なる高度な技術もあります。遺伝子検査で使われてる様々な分子生物学技術について解説します。

  • PCR法
  • LAMP法
  • G分染法
  • DNAシークエンシング
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